学習トレーニングチームのいもりです。
学習トレーニングは11月初旬に新機能として、画面上にメモを取ることができる「メモ機能」をリリースしました。
リリース後の活用は徐々に伸びており、特に計算が必要な数学で活用いただいています。
この機能は他プロジェクトと並行して進めていたため、検討に割けるリソースは限られていました。今回は要件定義のフェーズでAIによるプロトタイピングを活用し、チームの認識合わせを効率化するアプローチを取りました。
「動くもの」をベースに議論することで、検討開始から仕様確定までを約1ヶ月で完遂し、顧客に必要な機能を素早く届けることができました。本記事では、その開発プロセスについて紹介します。
開発経緯
「学習トレーニングの画面内でメモを取りたい」という要望は、学習トレーニングリリース当初からいただいている改善要望でした。
とはいえ、私が現在のチームに所属してからの半年間は、より緊急度や要望数の高い別の課題への対応を優先して進めていました。しかし、それらのクリティカルな課題を一つひとつ解消していくにつれて、ユーザーの不満点が「より良い学習体験」へとシフトし、結果としてメモ機能への要望が以前よりも顕著に届くようになりました。
メモ機能がないことが学習体験における最大のボトルネックになった今こそ、この要望に向き合うべきタイミングだと判断し、本格的な開発に着手しました。
「動くもの」を共通言語に
まずは現状分析を行いました。データサイエンティストが主導してVoC分析を行い、顧客が直面している課題を浮き彫りにしていただきました。
印象的だったのが、「紙を用意するのが面倒なだけでなく、PCのメモ帳アプリを横に開いて計算している生徒もいる」という事実です。いかなるデバイスであっても学習を画面内で完結させたいニーズがあることがわかったため、すべてのデバイスで利用可能なWebの機能として実装する方針が固まりました。
ですが、いざ要件定義に入ると既存の解答画面への影響やどの機能が必要か?という懸念が生まれ、具体的な実装イメージが定まりませんでした。
そこで、社内で開催されている「フロントエンド互助会」に相談を持ち込み、先行事例や方向性のアドバイスをいただきました。いただいた知見をベースに、AIコーディングを活用してプロトタイピングを実施し、解答画面上に被せてメモが取れる機能を20分程度で作成しました。

実際に動くものができたことでチーム内の議論の解像度が一気に高まり、具体的な機能要件へ踏み込むことができるようになりました。
「引き算」の意思決定
AIコーディングを活用すれば機能追加を行うこと自体は難しくありません。実際に何が必要な機能かを見極めるために、開発当初は既存ペイントツールにあるRedo/Undoなどの様々な機能を搭載したメモ機能をプロトタイプで作成し、社内ドッグフーディングを行いました。
社内ドッグフーディングを経て見えてきた課題は、スマートフォンでの限られた画面領域における操作性でした。多機能を搭載したメモはキャンバスエリアが狭くなり、ボタンの押し間違いも発生しやすく使い勝手を損なうことがわかりました。
そこで私たちは「ペイントツールではなく問題を解くための補助的なメモ機能である」という原点を思い出し、学習中のメモを取る際にストレスなく利用できるシンプルさを最優先事項としました。誤操作により体験を損なう可能性のあるRedo/Undoなどは搭載せず、必要な機能だけに絞り込む「引き算」の意思決定を行いました。
この決断で各機能の要件がシンプルになり、要件定義がスムーズに進行したことが短期間のリリースに繋がりました。
リリース後の反響と振り返り
リリースから1ヶ月以上が経過しました。グラフは1日ごとのメモの利用回数ですが、利用状況は順調に推移しています。また、リリース当初は解答UU数に対して1日あたり6%程度の利用数だったのに対し、現在は13%程度まで増加しています。
特に近い時期にリリースした数学Ⅲの問題での活用はトップクラスであり、当初の狙いであった「紙を用意する手間をなくし、学習に集中する環境を作る」という価値を必要としているユーザー層に届けられたと実感しています。

社内からの反応も励みになりました。ドッグフーディングでは早くリリースしたほうがいいと感想をいただいたり、窓口対応チームからは「特に良い改善だった」という声をいただいたことは素直に嬉しかったです。作り手として自信を持ってユーザーに案内できる機能を提供できたことはプロダクト開発における理想的な形を実現できたのではないかと考えています。
今回の開発を振り返って個人的に最大の収穫だったのは、AIなどの技術を活用することで、エンジニア個人の「要件定義の質とスピード」を劇的に向上させられると実感できたことです。 「どう実装するか(How)」をAIや互助会の知見でショートカットできた分、チームの議論が「何を作るべきか(What)」という本質に迫ることができ、機能の「引き算」といった意思決定に時間を割くことができました。
新しい技術を適切に活用することで、エンジニアは顧客の課題により深く向き合えるようになります。今後も技術の力を借りながら、ユーザーにとっての正解を最短距離で探り当てるプロダクトエンジニアリングを追求していきたいです。