Classi開発者ブログ

教育プラットフォーム「Classi」を開発・運営するClassi株式会社の開発者ブログです。

In-App Reviewで荒廃したアプリ評価が爆上がりした話

突然ですが、観た映画やドラマやアニメなどがすごく面白くて世間の評価はどうなってるんだろうとレビューサイトを見てみたら、思いのほか評価が悪くてしゅんとなった経験はありますか?ちなみに僕はあります。

ご挨拶が遅れてごめんなさい、こんにちは!Classiでモバイルエンジニアをしています、楠瀬大志(id:indiamela)です。

今回はIn-App Reviewを用いて弊社のAndroidアプリの評価が1.8→3.7まで爆上がりしたお話をしたいと思います。
In-App Reviewを簡単に説明すると、アプリ内で任意のタイミングでアプリのストアレビューを依頼できる、というものです。わざわざストアを立ち上げて該当のアプリページに遷移してから評価するという煩わしさと比べてアプリ内でポジティブな体験を得た直後にレビュー依頼できるのが強みです。また、その施策がユーザーに受け入れられているかを測る指標としても有効だと思います。

ユーザー視点でのアプリ内レビューのフロー

また、アプリ評価に関してはGoogleが近年信頼できる適正な評価を目指していて、しっかりとガイドラインが設けられています。過度なレビュー依頼や先に高評価してもらえそうか質問してからの訴求やポイントを付与してからの評価依頼などは以前はよくありましたが、それらはNGとなっています。

アプリ内レビューをリクエストするタイミング. ユーザーにアプリ内レビューをリクエストするタイミングを決める際は、次のガイドラインに従ってください。

有用なフィードバックが得られるように、ユーザーがアプリやゲームを十分体験してから、アプリ内レビューのフローを開始する。
ユーザーに過度にレビューを求めない。この方針により、ユーザーの不満を最小限に抑え、API の使用量を抑えます(割り当てに関するセクションをご覧ください)。
評価ボタンや評価カードを表示する前または表示中に質問をしない(「アプリを気に入りましたか?」といったユーザーの意見に関する質問や、「このアプリを 5 つ星と評価していただけますか?」といった予断を与える質問)。

私は自己紹介する時に「アプリレビューが荒れている事でおなじみのClassiでアプリエンジニアをやっております」と自虐ネタを言う事がありました。悲しい事にClassiのアプリの評価は低い状態でした。ユーザーからしてみたらダウンロードするのをためらってしまうレベルだと思います。勿論この結果には原因があるので真摯に向き合って解決していかないといけません。その施策の1つとしてClassiホームを最初にリリースして以来、ずっと課題だった「兄弟姉妹を持つ保護者のアカウント切り替えが面倒」という課題を解決するマルチアカウント機能を今年の3月にリリースしました。

Classiホームは初の保護者も対象にしたアプリだったのですが先程もお伝えした通り、リリース以来ずっと「簡単にアカウントが切り替えられるようにしてほしい」という要望を多く頂いていたため、これはユーザーに受け入れられる機能だと自信を持って言える状態でした。そのため、In-App Reviewを活用することでストアの評価の改善も合わせて行うことにしました。。過去に一度In-App Reviewの施策を行ったことがあり、十分な効果を得られた実績があったため、今回も十分な効果が見込めました。In-App Reviewは表示テストが非常に面倒です。会社のGoogle WorkSpace(旧G Suite)アカウントではストアから内部テスト版でリリースしても表示されないのでテスト用の@gmail.comアカウントを用意する必要があります。

In-App Reviewの実装自体は数行で終わる簡単なものですが、前述のテストの実施が手間な点と、どのタイミングでユーザーにレビューをお願いするかが重要です。Googleの定めるガイドラインに、

有用なフィードバックが得られるように、ユーザーがアプリやゲームを十分体験してから、アプリ内レビューのフローを開始する。

とあり、この「十分体験してから」とは何かを科学する必要があります。この方法論については様々なアプローチがあり、頭を悩ませるところです。

  • 時間(利用している時間帯や累計のアプリ起動時間など)
  • 回数(〇〇の機能をn回利用しているやコンバージョンに紐づくアクションの回数など)
  • ユーザー属性(Classiなら先生か生徒か保護者かなど)

色々とチームで検討した結果、今回はシンプルにアカウント切り替えをn回行った時に表示するとしました。このnに代入する数字についても議論がありましたがRemoteConfigを使っていつでも変更できるようにして一旦5回としました。
一般的に…という表現が適切か分かりませんが、コンバージョンに紐づくアクションを2〜3回繰り返し行ってくれたら表示させるケースが事例としては多いですが、アカウントの切り替え自体が簡単な操作な済んでしまう為、5回ほどアカウント切り替えを体験したもらった方がより適切な評価をしてもらえるだろうとチームで話し合いました。さて結果は・・・.

リリース後、一定期間が経ってから評価が急上昇しました。この一定期間は恐らくアカウント切り替えを5回実行するに達するまでの期間と読んでいます。面白い事に高評価が増えて低評価が減るという非常に理想的な推移を見せました。なかなかこんなに分かりやすく結果が出る事ってあまりないですよね。

上手くいったら上手くいったでなぜ上手く行ったのかも考えてみたいところです。先述の通り、兄弟姉妹を持つ保護者はアカウント切り替えが面倒なので簡単にアカウントが切り替えられるようにしてほしい、というご要望を多く頂いていましたが、その期待に応えられる機能を提供できたのではないかと思います。そして適切なタイミングでレビューを促す事ができたのも大きいはずです。一方で同じ施策をiOSでも行いましたがAndroidほどの劇的な成果は現状出ていません。
その原因として考えられることは2つあります。1つは、レビュー訴求の体験自体がiOS/Androidで違っていることです。レビュー訴求の表示/非表示はある程度OSによって制御されているので、狙ったタイミングで必ず表示されるとは限りません。iOSの訴求方法がダイアログなのに対して、Androidはボトムシートな点も訴求力に差があるのではないかと考えられます。

このように下から出てくるのがボトムシートです。ハーフモーダルや半モーダルとも言われています。ダイアログと比べて画面占有率が高いのとAndroidだと比較的ハーフモーダルの概念が新しめである事も関係しているかもしれません。

もう1つ考えられる原因は、シェア率の違いです。生徒はiOSのシェア率が圧倒的に高いですが、保護者はAndroidのシェア率が高いです。今回の施策でAndroid利用率の高い保護者の不満は解消された一方、生徒の利用率も多いiOSは別の理由から低評価をされているのではと考えられます。

と、ここまで書いてきていきなりGoogle Playの評価が1.0に爆下がりしました。タイトルに偽りありなのでこの記事はお蔵入りになるかもしれません。こんな事ってありますか?何らかのバグである事を願うしかありません(その後、1日経ったらほぼ元に戻りました。よかった!)

稀にこういう事もあるのでアプリの評価はあくまで1つの指標に留めておく方が良いと思います。とは言えアプリの評価が突然理不尽に下がるのは死活問題なので常に監視は続けていかないといけないですね。

In-App Reviewでわかった事を一言で表すと

アプリ内レビューは局地戦である

冒頭の質問にあるように私だったら自分が面白いと思った映画を観て感情が盛り上がってるタイミングで評価を付けて下さいと言われたら⭐️5を付けるかもしれませんが、レビューサイトを見てから評価をして下さいと言われたらもしかしたら⭐️4くらいに下がるかもしれません。

それは批判的なコメントで「言われてみれば確かに・・・」とあまり自分で気付けていなかった部分に気付けた場合や時間が経って冷静になって総合的な評価を出せるようになった為です。

もちろん映画もアプリも「面白い」や「使いやすい」というポジティブな体験を提供できたという前提ではありますが、その感情のままシームレスに評価してもらう、というのが重要に感じました。

このブログを読んでくださっている方々の中でアプリの評価が伸び悩んで困っている方は是非In-App Reviewの導入をおすすめします。その際はアプリを使っていて嬉しいポイントをユーザーの顔を思い浮かべながら考えてみて下さい。

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