Classi開発者ブログ

教育プラットフォーム「Classi」を開発・運営するClassi株式会社の開発者ブログです。

停滞した開発者ブログを復活させるまで

こんにちは、サーバサイドエンジニアのid:aerealです。

この記事ではClassi開発者ブログ (以後、開発者ブログ) の編集長としてClassi開発者ブログが再始動するまで・再始動してからおよそ半年の振り返りを通して企業の技術ブログ運営の裏側についてお伝えしたいと思います。

開発者ブログ再始動の経緯

Classi開発者ブログは2020年3月の新型コロナウイルスの影響で全国の学校が休校になってどうなったか - Classi開発者ブログを境に2020年10月のClassiで発生した2つの問題を繰り返さないために我々が取り組んでいること - Classi開発者ブログまで記事の投稿がありませんでした。

これはご利用いただいているお客様への情報発信と歩調を揃える必要がありとても難しい状態であったという背景があるにせよ、投稿が一時途絶え寂しい状態であったことは事実です。

2020年8月にClassiに参画した筆者は、このブログをClassiに所属するデベロッパーにとって重要な情報発信の拠点として復興させたいという思いを強く抱き、ブログ再開に向けて動き始めました。

まず、ブログをどのような位置付けとするのか・再開するにあたってステークホルダーは誰でどのようなブロッカーが存在するのか、を明らかにするところから始まります。

位置付けは大きく、採用戦略の第一級の手段として扱うのか・Classiに所属するデベロッパーのアウトプットの拠点として扱うのか、といった方針が考えられます。 ざっくりといえば当面は後者としよう、と決めました。詳細は後述します。

ステークホルダーとブロッカーの整理は、いかにもカロリーが高そうで身構えたくなりますし実際その覚悟をしました。しかし開発者ブログに閑古鳥が鳴いている状況を憂うメンバーばかりで目的意識はスムーズに共有できたので少しの旗振りで動き出すことができました。 その結果、開発者ブログについて以下のことを確認しました。

  • 開発者ブログは開発に関わる情報発信の場とする
    • 顧客コミュニケーションの主たるチャンネルではない
  • 編集部によるレビューを必須とする
  • 広報レビューは可能 (can) であり必須 (must) ではない
    • この判断は編集部に任される

Classi開発者ブログの目指すところ

企業が運営する開発者ブログ・技術ブログの目的としてブランディングや採用活性化などが一般に挙げられます。 筆者自身も、以前所属していた企業で開発者ブログの執筆に関わっていた際にこれらにポジティブな影響があることは実感しています。

一方で、こうしたPRへの寄与はブログの執筆や運用にかなりの熱量と時間を費して得られるものであって、一朝一夕でなるものではありません。 また、採用への寄与やブランディング向上は外部要因が占める割合も小さくなく効果測定が難しいです。 こうした背景により開発者ブログを再興するにあたって目標をブランディングや採用活性化に置くのは実現や評価が難しく頓挫してしまうおそれがあると考えました。

そこで開発者ブログを 「より充実した発信環境を求めるClassiの技術者に向けた執筆の場」 とすることにしました。

これをもう少し分解すると:

  • 読み手にとっての価値より書き手にとっての価値を第一に考える
    • 場を作ったり書くことを継続することに踏み出せないでいるメンバーが主な対象
    • そのために慣れた書き手たちが技術ブログを暖めたり、期待値コントロール、レビュアーとしてサポートする
  • 以下のような点は「できたら良いこと」という扱いにして、当面は第一の目的としない
    • 会社のブランディング・認知向上
    • 採用への貢献

……ということになります。

主要KPIは以下の通りとしています:

  • 執筆者のUU (より多くの人々が書くほど良い)
  • ブログ全体の記事執筆継続率
    • 筆者は問わずブログの記事公開が根付いているか
    • 期間中に書かれた記事数を日数で割る

ただし参考指標としてPVの推移は編集部が責任を持って見ています。 執筆者に対しては積極的にフィードバックしていません。執筆者全員が権限を持っているので本人が望めばはてなブログのアクセス解析機能で参照することができます。

また、以下の指標は当面重視しないことにしています:

  • Twitterやはてなブックマークなどの言及数など、SNSでの反応
    • 上記の通り「会社のブランディング・認知向上」は当面の間、第一の目的としないため重視しない

編集部の運営

以上のような経緯で再開したClassi開発者ブログは、現在この記事を執筆している id:aereal が発起人となった編集部が中心となって運営しています。 編集部はid:sasata299id:tetsuro-ito と発起人となった筆者である id:aereal が務める編集長の計3人からなります。

主な仕事は:

  • 記事のネタと公開スケジュールの管理
  • 執筆された記事のレビュー
  • その他、ブログ運営にまつわる仕事全般
    • 著作権の帰属の整理・明文化
    • ブログホスティングサービスの費用管理 etc.

……です。

記事のネタはAsanaのカンバンで管理しています。一般的なカンバン運用に倣い“Backlog”, “Ready”, “Doing”, “Waiting for review”, “Done”のレーンを作って、現在何待ちなのか一目でわかるようになっています。

Asanaのカンバン。Doingレーンに「開発者ブログ振り返りの記事」。Waiting for reviewレーンは空。Doneレーンに「3月に2020新卒に振り返りを書いてもらう」。
Asanaのキャプチャ

BacklogとReadyを分けているので「とりあえずこういうネタがありそう」というラフなトピックをBacklogに入れておき、具体的に書けそうになったらReadyに移すという運用が可能になり、Slackで湧いたアイデアを取り上げやすくなっていて良いかんじに機能しています。

またレビューが済んで記事の公開準備が整ったらGoogle Calendarに予定を入れます。編集部カレンダーは編集部のSlackチャンネルに流すようにしているので「おっ 今週はこの記事が公開予定だな」と毎日わかるようになっています。

Slackに流れる予定通知のキャプチャ。開発者ブログ編集部カレンダーに設定された「記事公開予定: そーだい塾の記事公開」という予定が通知される。
記事公開予定がSlackに流れる

現在のところ週1くらいのペースなので、ラフに1週間の予定として入れています。 月間ビューだと「この週は記事公開予定がある、この週は空いているので調整しようかな」と一目でわかって便利です。

編集部カレンダーの月間ビュー。「開発者ブログ編集部定例」「記事公開予定: あんずさんの記事」「そーだい塾の記事公開」という予定が入っている。
カレンダーの月間ビュー

これらを毎週15分の定例で確認・最新状態に更新したり声かけする人を見繕ったりします。 アジェンダが決まっており事前に準備をしっかりしておけば15分で十分だろうと見立て、実際に必要十分で延ばそうと話題に上がったことはありません。 15分はなかなかタイトなので事前にアジェンダをしっかり準備しておかないといけない良いプレッシャーがあり編集部一同から好評です。

半年間の振り返り

以上のような経緯で再開したClassi開発者ブログは、現在この記事を執筆している id:aereal が発起人となった編集部が中心となって運営しています。

この記事を執筆している時点では:

  • 執筆者UU: 17人
  • 記事数: 20記事 (1ヶ月あたり約3記事超)

……となっています。

上記からわかるように新しい記事のほとんどを新しい執筆者が書いてくれていることがわかります。 当面は少数の熱量が高いメンバーを中心に記事を執筆していくことになると見立てていたので、これは嬉しい誤算です。

またVPoTのid:nkgt_chkonkとVPoEのid:sasata299がそれぞれ執筆した2020年4月期に発生した2件の問題とそれ以後の体制・改善に関する記事をきっかけにDevelopers Summit 2021へ登壇する機会をいただき全国一斉休校によって教育プラットフォームの「Classi」に起こった大障害 〜サービス・組織をどう変化させたのか〜という発表をさせていただきました。 当面はブランディングへの寄与等は目標に入れないこととしていましたが、早くも結実しつつあること実感し一同で喜びました。 執筆者の二人にとってもプレッシャーのかかる内容だったと思いますが、それを乗り越えて発信してくれたおかげでもあります。

参考:

記事を公開した際には社内のSlackチャンネルで「この人がこういう記事を書いてくれましたよ」という宣伝を私からしていたのですが、その甲斐あってなのかプロダクト開発部以外のメンバーからも「ブログを読んでいるよ」という声を聞く機会がありました。 身近に読者がいることは編集部としても執筆者一同としても励みになります。

編集部の振り返り

最後に先日、編集部で実施した振り返りについて述べます。

再開からおよそ半年が経ったタイミングで「どんなことをやったか」「やったことでどんな影響があったか」「思いがけず起きたことは何か、それを再現しつづける術はあるか」の洗い出しを主眼に置き、より持続的な開発者ブログ運営に繋げるための糧とすべく、YWT (= やった、わかった、Try = 次にやる) 形式で振り返りました。

以下に一部抜粋したものを載せます:

  • やったこと
    • 編集部立ち上げ
    • 毎週15分の定例実施
    • Slack上で記事レビュー
    • チームメンバーへ記事執筆の斡旋
  • わかったこと
    • 推進役がいることの重要性
    • 執筆に意欲的な人が多い
    • 記事のレビューが受けられることによる安心感がある
    • 定例は15分でちょうどいい
  • 次にやること
    • 執筆者のUUを増やしたい
    • 1人あたりの執筆数を増やしてリピーター化したい
    • 振り返りでは概ね「想定以上にうまくいっている」と話題になりました。
    • 開発者ブログ執筆に潜在的に意欲的だったメンバーの存在がとても大きく、うまく掬い上げられたからだろう、と結論付けています。

むすび

Classi開発者ブログは「やったら良さそうなこと」「やるべきこと」の淡々とした積み上げと少しの運に助けられ軌道に乗っているだけということがおわかりいただけたかと思います。

衆目の耳目をさらう開発者ブログは類まれなる情熱と資源と少しの運から成り立っているのだろうと推察します。 それらを一度目指せどもうまくいかず頓挫する企業の開発者ブログも少なくないことを知っています。

しかしClassi開発者ブログは当初立てた目標を果たしつつあります。それは身の丈にあったマイルストーンを設定していること、動機の内在化を図ったからといえます。 ゆくゆくはClassi開発者ブログが大きくなることを夢見ないわけではありませんが、それは今掲げている「より充実した発信環境を求めるClassiの技術者に向けた執筆の場」というスローガンの延長線上に大きくなることがあるからでしょう。

筆者は各企業のユニークな取り組みがより世の中で行き交う世界を望んでいます。 そのためにこうした素朴ながらヒロイックではない開発者ブログのありかたをひとつご紹介し「やってみようかな」と思い立ってくれる方が一人でも増えることを願い筆をとりました。おもしろい記事が世の中に増えれば幸いです。

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