Classi開発者ブログ

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個別学習機能の裏側を紹介: アダプティブラーニングエンジン「CALE」

みなさん、こんにちは。 データAI部でデータサイエンティストをしております廣田と申します。今回は、2022年5月にリリースした「全国模試に対応したAI搭載の個別学習機能」について、ユーザーからのフィードバック及びAIの部分について簡単に紹介していきたいと思います。

弊社ではこのAIを「CALE(Classi Adaptive Learning Engine)」と呼んでおり、本記事でもこちらの呼び方を使っていきたいと思います。

個別学習機能およびCALEについて

まず、個別学習機能について簡単に紹介します。こちらの画像を使いながら説明します。

個別学習機能の全体像(https://corp.classi.jp/news/2710/ より引用)

個別学習機能は

  • STEP 1: 先生によるテスト配信
  • STEP 2: 生徒によるテスト解答

の後のSTEP 3に対応する機能で、以下の流れを繰り返しながら生徒は学習していくことになります:

  • CALEが生徒の解答データを取得し分析
  • CALEが生徒におすすめの問題を複数選び、生徒に提示(推薦ロジックは後述)
  • 生徒は提示された問題の中から1つ問題を選び解答

複数の問題を提示する点が大きなポイントで、生徒の「どういう問題を解いていきたいか」といった意志を反映する余地を確保することで、生徒が納得感を持って取り組めるよう工夫しています。

CALEはこの個別学習機能の中で、生徒に合った問題を推薦する役割を担っています。

ユーザーからのフィードバック

幸いなことに、リリース以後多くの生徒にCALEを利用していただいております。ここでは、CALEを利用していただいた一部の学校の生徒に対して実施したアンケート結果について紹介いたします。

CALEが推薦した問題の難易度について尋ねたところ、一番多いのが「難しかった」で、次点で「ちょうど良かった」となりました。「難しかった」と「ちょうど良かった」には大きな差は無く、総評としては「やや難しい」と言えると思います。

CALEが推薦した問題の難易度についてのアンケート結果

CALEの問題推薦ロジックの基本アイデア

ここではCALEが問題を推薦する際の基本的なアイデアについて紹介します。ポイントは

  • ①問題の難易度調整
  • ②学習単元の遷移

の2点です。

①問題の難易度調整

基本的なアイデアは「難しすぎず易しすぎない問題を推薦する」というものです。易しすぎる問題では学べることも少ないですし、難しすぎる問題の場合はそもそも何かを学び取ることが難しいです。CALEでは「この生徒にこの問題を出した時、何%の確率で正解できそうか」を計算し、その予測正答確率の値に基づき、難しすぎず易しすぎないような問題を選び出しています。予測正答確率の算出には項目反応理論(Item Response Theory)を利用しております。

既に触れましたが、現状のCALEは生徒からは「やや難しい」と評価されております。仮に正答率が高めの問題を選ぶようにCALEの挙動を調整すれば、生徒が「ちょうど良い」と感じる割合が増えると予想されます。しかし単純に難易度を易しくしてしまうと、今度は生徒の学びに繋がる要素が減ることが予想されます。生徒の学習の進めやすさと学習効果、双方のバランスがちょうど良くなるラインを探ることは非常に興味深いテーマで、今も検討を重ねているところです。

②学習単元の遷移

上記のような難易度調整をしても全く問題に正解できないケースが存在します。例えば、現在学習中の単元の前提の単元の理解が不足しており、現状の単元の理解が進まないようなケースです。このようなケースの対応策として、CALEでは学習単元の遷移機能も備えております。

生徒が学習中の単元で全く正解できなかった場合、CALEはその前提知識に相当する単元にさかのぼって問題を選んでくるようになっております。もしさかのぼり先の単元の理解が十分だと判断されれば、元の単元から出題されるようになります。

ただし単元間の依存関係は自明なものではないため、「この単元ができなかった時にどの単元にさかのぼらせるべきか」といった点については今も検討しているところです。

今後の課題

課題は山積みです。例えば現状のCALEの問題推薦ロジックについての課題であれば

  • 出題難易度のバランス調整
  • さかのぼり先の単元の選択方法
  • 予測正答確率の精度向上

などが挙げられますし、さらに大きな枠組みで考えると

  • 現状のロジック以外の問題推薦ロジックの検討
  • 学習効果の測定

などが挙げられます。

学校の先生・生徒の声に耳を傾け、教育工学の知見も踏まえ、1つ1つ着実に解決していきたいと考えております!

さいごに

今回紹介したCALEをはじめとして、弊社ではAI系の機能の研究開発を積極的に行なっております。まだまだ課題が山積みなCALEを一緒に進化させていきたい、教育現場の課題を技術で解決したい、などの気持ちがある方はぜひこちらからご連絡ください!

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