はじめに
2025年6月に入社しました、id:tommy1038 です!
2025年6月28日、京都・先斗町歌舞練場にて開催された「関西Ruby会議08」に参加してきました。
関西圏ではこれまでも「大阪Ruby会議」など地域のRubyイベントが継続的に開催されてきましたが、「関西Ruby会議」としての開催は実に8年ぶり。 久しぶりにこの“冠”が復活したこともあり、全国から多くのRubyistが集まりました。
会場となった先斗町歌舞練場は、歴史ある建物で、出囃子や「めくり」などの演出もあり、Rubyのイベントでありながら、どこか和の趣が感じられる特別な空間でした。


会場内にはスポンサー企業のブースや書籍紹介スペースも設けられ、交流の場としても大いに賑わっていました。 Rubyという言語を通じて、これほど多様な表現や熱量が集まる場があるのだと、改めて実感しました。
気になったKeynoteやSessionをいくつかピックアップしてご紹介します。
Witchcraft for Memory by Masataka Kuwabara(@pocke)さん
Ruby/RBSコミッターでもある @pocke さんによるKeynoteです。
RBS/Steepまわりのメモリ削減に関する工夫が詰まっており、とても学びの多い発表でした。
前半は、Rubyの memory_profiler では把握しづらいピーク時のメモリ使用状況にアプローチするためのツール「Majo」の紹介。
Cレベルの TracePoint APIを活用して、
- オブジェクト生成・解放のフック
- GCを生き残ったオブジェクトのみを記録
- 記録は Ruby オブジェクトを使わず、Cの構造体と配列で実施
といった低レイヤーなアプローチが印象的でした。
「GCが走っているときに、GCを走らせてはいけない」── そんな制約のなかで、工夫を凝らして適切に処理する発想と技術力には、心から感動しました。
後半では、SteepのLSPサーバーにおけるworkerプロセスのメモリ増加問題に対し、「Refork」という手法で解決を図った取り組みが紹介されました。
Steepでの refork 実装では、まず管理プロセスが全ワーカープロセスをforkし、一度型検査を行ってメモリを“暖気”。
その後、各ワーカープロセスがさらに新しいワーカーをforkし、古いプロセスを順次終了させていく流れになっていました。
この過程での課題や、実運用に耐える仕組みに仕上げていくまでの苦労と工夫が丁寧に語られ、非常に勉強になりました。
普段の業務では、Rubyのメモリ管理やGCについて意識する機会は少ないですが、こうした低レイヤーの知見に触れることで、Rubyの内部動作やパフォーマンス改善の可能性を強く感じることができました。
Masataka Kuwabara さん、素晴らしい発表をありがとうございました。
資料も公開されていますので、詳細を知りたい方はこちらもぜひご覧ください。
「1ヶ月でWebサービスを作る会」で出会った rails new、そして今に至る rails new by kiryuanzu さん
社内でもおなじみ、id:kiryuanzu さんによるセッション。
自身が開発・ローンチしたポッドキャスト系Webサービスを題材に、開発の過程で直面した壁や、それをどう乗り越えたかをリアルに語ってくれました。
「どうすれば本当にリリースまでたどり着けるのか?」
この問いに向き合いながら、“やるぞ!!” と思えるエネルギーを参加者に届けてくれる力強い発表でした。
特に印象的だったのは、ローンチ達成のための3つの秘訣です。
まず1つ目は、「小さく作って出す」こと。
ポッドキャストのRSSフィード発行という最小限の目標に絞り、3週間という短期間で運用開始まで持ち込んだスピード感には、自分も大いに刺激を受けました。
次に、「様子を実況する」こと。
プロポーザル提出時点でサービスが半分もできていなかったという裏話には驚かされましたが、SNSで制作の過程を発信し、自らを奮い立たせるスタイルがとても印象的でした。
そして3つ目は、「自分が最初のユーザーであること」。
本当に “あったらいいな” と思えるサービスを作り、自分で使い続けることで、愛着と改善意欲を自然と保ち続けられるという気づきは、個人開発を続ける上での重要なヒントだと感じました。
この3つのシンプルで本質的な行動が、「つくるだけ」で終わらず、ちゃんと世の中に届ける力になっている。 個人開発で立ち止まりがちな人こそ、背中を押してもらえる発表だったと思います。
kiryuanzu さん、素晴らしいお話をありがとうございました。
資料も公開されていますので、詳細を知りたい方はこちらもぜひご覧ください。
ちなみに、登壇に至るまでの経緯や準備の様子については、こちらのブログで紹介されています。
ふだんのWEB技術スタックだけでアート作品を作ってみる by Akira Yagi さん
八木章(@akira888)さんによるセッション「ふつうの技術スタックでアート作品を作ってみる」では、Rails・Hotwire・HTML・CSSといったおなじみの技術を用いて制作された、時計モチーフのアート作品が紹介されました。
私自身も、過去に Processing や p5.js を使ってインタラクティブな作品を作った経験があり、共感しながら聴き入ってしまいました。
今回の挑戦が面白いのは、特別なライブラリやフレームワークを使わず、いつものWebアプリ開発の延長線上で表現に挑んでいる点です。
- HTMLとCSSで時計のビジュアルを構成
- 針の動きをCSSアニメーションで表現
- 時刻やパターンのロジックをRailsで生成
- 時間経過による切り替えをStimulusで制御
という構成で、MVCの概念をそのままアートに応用していました。 時計を構成するモデル設計やマッピングロジックの美しさも印象的で、技術と表現が見事に調和していました。
中でも心に残ったのは、「Railsを使っても、ユーザーアクションのない作品を作っていいんです」というメッセージ。 Rubyとアート、その両方を大切にしている姿勢が伝わってきて、温かい気持ちになるセッションでした。
Akira Yagi さん、素敵な発表をありがとうございました。
資料も公開されていますので、詳細を知りたい方はこちらもぜひご覧ください。
Rubyで世界を作ってみる話 by Akira Matsuda さん
Matsuda さんによるセッション「Rubyで世界を作ってみる話」は、Rubyのオブジェクト指向表現を用いて “世界” をモデリングし直すという、遊び心と技術的探究心に満ちたチャレンジでした。
class Atom から始まり、電子や分子といった構成要素を定義していく中で、Rubyのクラスやモジュールを通じて現実世界を抽象化していく──
まさにオブジェクト指向の原点に立ち返るような体験でした。
中でも印象的だったのが、InChI記法で記述された複雑な化学構造式をRubyでパースする実装です。 構文と意味の“橋渡し”としてのプログラムの美しさがあり、DSL的な発想としても非常に刺激的でした。
さらに、Gitの履歴を使って世界の始まり(ビッグバン)まで遡ろうと試みるも、1970年が技術的な限界だったというオチには、会場から笑いが起こり、セッション全体に心地よいユーモアが漂っていました。
会場が京都だったこともあり、京大の先生方の理論をRubyに取り込もうとする試みも紹介され、参加者の関心を集めていました。
業務アプリの枠を超え、Rubyという言語の表現力を最大限に活かして「世界を再構築する」という視点は、 コードを書く楽しさや、創造する喜びをあらためて思い出させてくれるセッションでした。
Akira Matsuda さん、素晴らしい発表をありがとうございました。
それぞれの「関西Ruby会議08」
一緒に参加したClassiメンバーも、それぞれ自分の言葉で感想を残しています。
雰囲気や熱量の伝わる素敵な記事ばかりなので、よければこちらも覗いてみてください!

歌舞練場という普通の技術カンファレンスではやらないような特別感のある会場と演出がとても良く、自分でも何か手を動かしたくなる刺激的なトークばかりで最高に楽しい地域Ruby会議でした!
ブログの詳細はこちら 👉 関西Ruby会議08に参加してきた - kozy4324の日記
私自身、人生初の技術カンファレンスでした。 運営の方はとても熱量をもってやられており、登壇された方々の内容もとてもおもしろく、自分で手を動かしたくてウズウズしてしまいました! また次回も参加したいと思いました!!
ブログの詳細はこちら 👉 関西RubyKaigi08に行ってきた - nekobitsdreams’s diary
今回のRuby会議に参加し、「個人開発をしたい」と素直に思いました。バグとの戦いも含めてそれも「ものづくりの楽しさ」であることを登壇者の方のお話から気付かされました。 これから、楽しみながらいろんなことに挑戦していきたいです。
ブログの詳細はこちら 👉 関西Ruby会議08に参加しました!|Akinko
初めての大型技術系カンファレンスで刺激がたくさんありました!特に個人開発の登壇をしていらっしゃる方が多くて参考になる点が多く、自分も趣味と重ねて個人開発を進めていきたいです!目指せ登壇!
ブログの詳細はこちら 👉 関西RubyKaigi行ってきた件! - butyooo’s blog
初めての登壇でとても緊張しましたが、無事終えることができ本当に良かったです!発表準備から当日までの過程を暖かく見守ってくださったClassiのメンバーの方々に改めて感謝の気持ちを伝えたいです。
ブログの詳細はこちら 👉 関西Ruby会議08に登壇してきた、それらにまつわる全ての感情 - 桐生あんずです
終わりに
関西Ruby会議08。ここで紹介しきれなかったセッションも含めて、本当に刺激の多い一日でした。
低レイヤーの深掘りからアートの表現、個人開発のリアルな奮闘記まで、「Rubyでこんなこともできるんだ」という気づきがいくつもあり、あらためてこの言語の懐の深さを実感しました。
ふだんの業務ではなかなか出会えない視点や発想に触れ、自分も何か作ってみたいな、という気持ちが自然と湧いてきました。 歴史ある先斗町歌舞練場という特別な場所で、Rubyへの愛や技術への熱量が会場のあちこちから伝わってくる、うれしくて、ちょっと誇らしい時間でした。
運営のみなさま、登壇者のみなさま、本当にありがとうございました!
最後に、会場で撮ったClassiメンバーとの写真や、Matzとの記念ショットをいくつか載せておきます📸

