こんにちは。Classiでソフトウェアエンジニアをしている中村( id:kozy4324 )です。
今回は、社内で継続している技術活動「OSSやっていきの集い」についてご紹介します。活動開始から4ヶ月の間に取り組んできたこと、そして実際にOSSプロジェクトへプルリクエストを送ってマージされた経験についてまとめました。
OSSやっていきの集いとは
この活動は、SmartHRさんの取り組み「OSSやっていきの集い」から着想を得て、名称もそのままお借りして始めました。
OSSに関心はあるものの、実際に関わるのはハードルが高く感じられることがあります。私自身もそうでした。 一人では難しく感じることでも、仲間と取り組めば少しずつ前に進めるのではないか。そんな思いからスタートした活動です。
社内でこの活動を始める際には参加するメリットを明確にすることも意識しました。 活動を通じて期待できるアウトカムは以下のようなものです。
組織にとってのメリット
- OSSに貢献するエンジニアが増え、企業としての発信力も高まる
- 技術広報の題材として活用できる
- 開発スキルの向上が期待できる
- チームを越えた交流が生まれる
個人にとってのメリット
- OSSに関わる心理的ハードルを下げられる
- 実践を通じた学びが得られる
- 社外発信や登壇の機会にもつながる
また、東京Ruby会議12前夜祭での発表 「Rubyと暮らし、OSSに貢献し、登壇する ── 半年間続けた『OSSやっていきの集い』の成果と学び」 にも背中を押されました。実践例を知ることで自分たちの活動がどう発展しうるか、イメージを持てるようになりました。
立ち上げから4ヶ月で取り組んだこと
活動の最初のテーマとして、Rubyのコード整形・静的解析ツールであるRuboCopを選びました。 まずは「RuboCopを知る・使う」ことからスタートし、段階的に理解を深めていきました。
RuboCopの活用に向けた取り組み
基礎固め
2月4週目〜3月1週目(約2週間)
RuboCopのGitHubリポジトリや公式ドキュメントを読み、基本的な使い方を習得しました。Copの実装を読む
3月2週目〜5月2週目(約2ヶ月)
Style/RedundantCondition
など具体的なCopのコードを読み解きながら、抽象構文木(AST)の概念を学習しました。カスタムCopの作成
5月3週目〜6月3週目現在(約1ヶ月経過)
社内プロジェクトで使えそうなカスタムCopの作成にチャレンジしています。例えば社内ライブラリに対して不適切な使い方を検知するCopなど、アイデアレベルから持ち寄り、それをどう実装できるかを参加者で会話しながら取り組んでいます。リリース情報の追跡と適用
2月4週目〜6月3週目現在(約4ヶ月経過)
RuboCopのリリースノートを定期的に確認し、社内プロジェクトでのバージョンアップにも取り組んでいます。 エラーが発生した際は「これは貢献のチャンスかもしれない」と前向きに捉える意識も芽生えはじめました。
RuboCop 1.76.0で気づいたエラーメッセージの違和感
ある日、RuboCopを1.76.0にアップデートしたところ次のような指摘を受けるようになりました。
C: Style/ItBlockParameter: Avoid using numbered parameters for multi-line blocks. some_ids = some_ids.map do ... ^^^^^^^^^^^^^^^
実際のコードは以下のようになっていました。
some_ids = some_ids.map do do_something(with: it) end
調査したところ、Style/ItBlockParameter
のEnforcedStyle
のデフォルト値がv1.76.0で変更されたことが原因でした。
https://github.com/rubocop/rubocop/releases/tag/v1.76.0
v1.75.xまではonly_numbered_parameters
がデフォルトでしたが、v1.76.0からはallow_single_line
が新たに追加され、こちらがデフォルトとなっています。その結果、設定を明示していないプロジェクトでは複数行ブロック内でのit
の使用が許容されなくなりました。
このようにエラーの理由は理解できたのですが、表示されるメッセージには少し違和感がありました。
Avoid using numbered parameters for multi-line blocks.
今回のコードでは「numbered parameter(_1
, _2
など)」は使っておらず、it
を使っているにもかかわらずその利用を避けるようにというメッセージに読めてしまいます。
コードとエラーメッセージを見比べても、なぜ警告されているのかが直感的に理解しづらい状況でした。
RuboCopへの修正プルリクエストとマージ
このメッセージの違和感を解消するためエラー文言の修正に特化したプルリクエストを作成しました。
そしてありがたいことに当日中にマージしていただくことができました。これは「OSSやっていきの集い」を始めた当初から目指していた「実際にOSSに貢献できる経験を得る」という目標の達成でもあります。
日々の開発のなかでOSSを継続的に利用していたからこそ、違和感に気づき、改善のきっかけを掴むことができました。 ゼロからのスタートでも数ヶ月で貢献のチャンスを得られたことは非常に嬉しい成果です。
これからの展望
「OSSやっていきの集い」はまだ始まったばかりの取り組みです。今後もRuboCopの内部実装を読み解きながら、カスタムCopの開発や小さな改善の提案を通じて、OSSとの関わりを深めていきたいと考えています。
この活動を通じて、ClassiのエンジニアがOSSと自然に関わり、学びを得て、最終的にはOSSコミュニティに貢献できるような文化を育てていければと思います。